着物姿で立ち寄りたい、浅草の老舗甘味処・梅園
創業の由来──別院の茶屋から甘味名所へ
「梅園」という名は、創業当時に店があった場所、浅草寺の別院「梅園院」に由来します。境内の庭には梅の木が多く植えられており、その一角で茶屋が営まれていたことから、人々の間でこの店は「梅園」と呼ばれるようになりました。
創業は安政元年(1854年)、江戸時代末期です。当時の茶屋は、参拝や行商の合間に人々が立ち寄り、飲食をしながら休憩する場として利用されていました。梅園もそうした茶屋の一つとして始まり、営業を続ける中で、甘味を中心に提供する店へと形を整えていきました。
その後、東京が江戸から近代都市へと変化する中で、周囲の街並みや生活様式は大きく変わりましたが、梅園では作り方を大きく変えずに営業を続けています。小豆は火加減を調整しながら炊き、白玉は歯切れを残すように仕上げ、寒天は甘味全体のバランスを考えて使われています。こうした工程を積み重ねた甘味は、現在も創業当時の考え方を踏まえた形で提供されています。

文学作品に登場する老舗甘味処
この人気は、すでに明治時代から広く知られていました。日本の文豪・永井荷風も、随筆や日記の中で浅草の梅園に触れ、混雑のため入店できなかったことを記しています。
この記述から、当時すでに店内が多くの客で埋まり、待たなければ入れない状況であったことが分かります。梅園が当時すでに多くの客を集め、浅草を訪れる人々の立ち寄り先として定着していたことが分かります。

昔ながらの造りが残る店内
店内には、使い込まれた木のテーブルと椅子が並び、装飾は控えめです。照明は落ち着いた明るさで、席に着くと注文した甘味が卓上に運ばれます。店内では滞在を急かされることはなく、食べ終えるまで席で過ごせます。
週末や観光シーズンは混雑し、行列ができることがあります。待ち時間を避けたい場合は、昼食時を外すか、平日に訪れると比較的入りやすくなります。空いている時間帯であれば、席に余裕があり、落ち着いて利用できます。

昔ながらの注文方法
梅園では、昔ながらの注文方法が今も続いています。来店後はまずカウンターで注文し、支払いは現金のみ。食券を受け取ったら、スタッフの案内に従って席へ向かいます。
この手順は初めての人には少し古風に感じられるかもしれませんが、店内では注文順に調理と提供が行われます。席に着いた後は時間を気にせず、自分のペースで食べることができます。

季節限定と持ち帰りの楽しみ
定番のおしるこや白玉、寒天に加え、季節ごとに限定の甘味も楽しめます。秋にはかぼちゃや栗を使った甘味が登場し、夏にはさっぱりとした寒天やかき氷など、暑さを和らげる品々が並びます。
また、店頭では包装された和菓子も販売されており、手土産として持ち帰ることができ、浅草らしい甘味を自宅でも楽しめます。

創業170年の甘味を味わう
浅草の街を歩いていて「梅園」の看板を見かけたら、立ち寄ってみてください。和菓子を一品選び、抹茶と一緒に口にすると、甘さと苦みの違いがはっきり分かります。噛むたびに小豆や餅の食感が伝わり、食べ終えたあとも重さは残りません。
提供される甘味は、創業から約170年続く作り方を踏まえたものです。人通りの多い浅草にありながら、店内では目の前の甘味を食べることに集中して過ごせます。
